コラム『日本映画の玉(ギョク)』谷口登司夫が語る三隅研次   Text by 木全公彦
勝新太郎と北野武
――立ち回りにしても会話のシーンにしても監督や編集者の個性が出ますね。立ち回りと会話とどっちがやっていて楽しいですか。

谷口そりゃ立ち回りを編集しているときのほうが楽しい。やり方によっては全然変わってしまうおもしろさがあります。

――会話の場面もしゃべっているほうを映すか、聞いているほうを映すか、言葉尻で切り返すのか、組み合わせは無限にありますが。

谷口立ち回りと違って会話の場面は切るところは大概決まってますね。だけど、しゃべっているところを2台のキャメラで撮っていてどっちをオンにするかオフにするか、先ほど言われたように無限にあるんですけど、勝ちゃんの場合は裏ばっかりにして、つなげてみると全部裏ばかりということがあって、もう勝手にせいという感じですわ。

――僕は北野武が勝さんの映画作りを意識しているのかなと思うことがあるんですが。

谷口あ、それはしてます、してます。もう完全に。僕が武さんの編集をやったときに本人に「ほんまに勝ちゃんによう似たことをやるな」と言うたことがあります。

――やっぱり。裏芝居を見せるのが好きなのもそっくりで。

谷口そうです。『3-4x10月』(90年)で武さんは編集がおもしろそうだと編集室にやってきてね。それで編集のやり方を教えたら、すぐに覚えて、あとは自分でやるようになって、僕を使ってくれなくなった(笑)。