コラム『日本映画の玉(ギョク)』谷口登司夫が語る三隅研次   Text by 木全公彦
ストック・ショット/画コンテ
――ほかの作品のストック・ショットの使い回しについては編集者の判断ですか。

谷口だいたいね。『忍びの者』シリーズで何遍城の爆破場面を使い回したか分からんぐらい。

――ちゃんと整理されているんですね。

谷口いやされてない。一度ちゃんと整理したらと昔から会社に言ってたんです。勝ちゃんともそういうのばかり集めて保存して貸し出す会社を作ろうかと話していたことがあるぐらい。

――じゃあ、もっぱら谷口さんの記憶で使い回していらっしゃるわけですね。

谷口そうです。

――フィルムのNG率は他社に比べてどのぐらいなんですか。

谷口普通だと思いますよ。だいたい使用量はオーバーします。でも大映が潰れるちょっと前になると、だんだん厳しくなってきた。カラーで焼くと高いからモノクロで焼いて、それを編集していました。監督がどうしてもカラーで見たいという場面だけカラーで焼いてもらって。その場面だけパートカラーになる。見にくくて貧乏くさくてどうしようもなかった。それで会社に内緒で全部カラーで焼いたことがある。それがバレて製作部長に呼ばれて給料から差し引くと言われて。

――それは厳しい。ところで三隅さんは画コンテを描きましたか。

谷口台本にマンガみたいな画でコンテがびっしり描いてあった。撮る前からちゃんと頭の中でカット割りができてたんでしょう。大映京都でそうやってちゃんと画コンテを描くのは三隅さんと安田公義さんの二人かな。

――安田さんの画コンテはよく聞きますが、三隅さんの場合は台本に線を引くだけだったという証言もあります。

谷口安田さんは絶対ですね。僕じゃないですが、ちょっと編集で直したら、「3日も4日も徹夜で考えたコンテを動かすな」と言ったそうです。安田さんの場合、美術部が図面を引くとき、入口の場所を変更したりすると、コンテを描き直さんといかんときもある。