海外版DVDを見てみた 第8回『テレンス・デイヴィスを見てみた』 Text by 吉田広明
テレンス・デイヴィス
前回のビル・ダグラスに続きイギリスの映画作家を取り上げる。ダグラス同様自伝的な作品からキャリアを開始している作家で、ダグラス同様地方の下層階級の生まれ(ダグラスは34年スコットランド、デイヴィスは45年イングランド、リヴァプール)であり、自伝的トリロジーを、しかもBFIの助力で製作することからキャリアを開始している点でもよく似ている(ただ二人が知り合っていたのかどうかは不明)。ケン・ローチに代表的、またフリー・シネマなどもそうだが、イギリスには下層階級出身の作家が自己の環境をリアルに描くことから、自己のキャリアを開始している例が多い。無論これはイギリスという国が階層社会であること、若者にとってそうした社会へのプロテストが自己表現の出発点になっていること(ブリティッシュ・ロックに典型的)が原因ではあるだろう。加えて、イギリスの映画製作体制にも遠因はあるかもしれない。基本的に独立プロによる製作が基本であるイギリスは、映画学校で学んだ生徒が映画作りを開始するには、自分で出資者を探して映画を作ることになるが、自伝的な作品は、まず何より語るべきことがあり、作る動機が明確にある点が強い。これはプレゼンテーションには有利な点である。加えてそうは予算がかからない(ロケは路上、キャストは素人、スタッフも少人数)。ということがあるのではないかと思うが、この辺はもう少しイギリス映画事情を探ってみなければなるまいと思う。