海外版DVDを見てみた 第7回『ビル・ダグラスを見てみた』 Text by 吉田広明
八月中に仕事が重なり、九月に疲労脱力してしまったせいで、九月分の更新ができずじまいになってしまった。さらに、十月取りあげようと思っていた作家の原稿の準備が追いつかず、急遽差し替えねばならなくなり(これについては以後改めて取りあげることもあるかと思うが)、更新が遅れてしまった。そんな人がいるのかどうか分からないが、もし更新を待っていてくれた方があるのならばお詫び申し上げたい。

ビル・ダグラス

『トリロジー』DVD
さて、今回取りあげるのはビル・ダグラス。スコットランドの映画作家で、生涯に四本しか映画を撮っていない。かつ、そのうちの三本は短編ないし中編で、四本総計しても六時間に満たない。逆に唯一の長編は三時間という長尺で、そのせいばかりでもないのだが、公開がたった二週間で打ち切られた後、DVD化されるまではまったく顧みられることがなかった。それ以外の短編、中編の製作にBFI(ブリティッシュ・フィルム・インスティチュート)が関与していることもあり、まずその三本を2008年に『トリロジー』としてまとめて、次に長編作品を2009年に、とその全作品がBFIからDVD化され、発売されることにより、ようやく実際にその作品を見ることができるようになった。雑誌Time Outのベスト・イギリス映画27位に『トリロジー』が入っているとはいえ、本国イギリスですら彼の作品がどれだけ知られていたのか心もとなく、現に筆者の手元にあるBFIのイギリス映画の総覧The British Cinema Book(2001年第二版)ですら、80年代以降の政治映画の一本として『同志たち』の題名が挙げてある(監督名なし)のみで、ビル・ダグラスへの言及は一切ない。まして日本では、という現状で、実際筆者もBFIでDVD化されているイギリス映画作家がいるということで先ず名前を知り、どんなものなのか買って観てみたという順序で、必ずしも前々から彼の名を知っていて、ずっと観たいと思っていたわけではない。DVDが出ていなかったら、例え特集上映で上映していたとしても、気にして観に行っていたわけではないだろう作家だ、という意味で、海外版DVDを扱う本稿にはある意味ふさわしいのかも知れない。