海外版DVDを見てみた 第6回『ラウール・レヴィを見てみた』 Text by 吉田広明
最期~ヌーヴェル・ヴァーグへの引導
ラウール・レヴィがある若い女性への叶わぬ恋から自殺したのは確かとしても、それは直接的なきっかけであって、やはり根本には映画を作り続けられない、という絶望があったのだろうと思う。実際監督作二作も興業的には失敗だった。彼が導火線に火をつけたといってもいいヌーヴェル・ヴァーグも六十年代終りごろに変質、68年のカンヌ映画祭でゴダールとトリュフォーは共闘するも、その後ケンカ別れをすることになる。ヌーヴェル・ヴァーグ(新しい波)の「新しさ」も次第に新しさを失い、変質してゆく、あるいはまた別の新しさを探し始める。その変わり目でレヴィが死んだのもやはり故ないことではなかったかもしれない。レヴィは、ヌーヴェル・ヴァーグそのものではなかったにしても、ヌーヴェル・ヴァーグと共に生き、そして死んだ、共闘者だったと言っていいだろう。

ラウール・レヴィ(Raoul Levy)の『二人の殺し屋』Hail! Mafia(仏題Je vous salue, Mafia!)は、アメリカのSinister Cinemaから、『ザ・スパイ』The Defector(仏題L’espion)は、同じくアメリカのWarner Archive Collectionから発売されている。共にリージョンはフリー。