海外版DVDを見てみた 第17回 ロバート・ヘイマーを見てみた Text by 吉田広明
ロバート・ヘイマー
前回前々回とイギリスのネオ・ノワールを取り上げ、引き続きその路線で行くつもりだったが、(2012年)9月21日にアテネ・フランセで、ここでも以前取り上げたアルベルト・カヴァルカンティの『私は逃亡者』を上映してトークをする機会があり、その際イーリングの諸作家をざっと調べ直してみて、ロバート・ヘイマーと、ベイジル・ディアデンはちゃんと取り上げるべきだとの感を強くした。ので、今回と次回は、時代が戻るが、この二人の作歴について書くこととする。ヘイマーもディアデンも特筆に値する犯罪映画を撮っているものの、まともに公開も紹介もされていない。とりわけヘイマーについては、代表作『カインドハート』がようやく2007年にDVD化されたのみ(これも既に入手が難しくなっている。ただしレンタルは可。)。ヘイマーはこれから述べるように、その作品の世界観がイーリングの作家の中でも誰よりも陰鬱であり、そのため早くにイーリングを出ている。なおかつその実人生も悲劇的なものであった。一方ディアデンは、イーリングの作家の中でも最も多作、興行成績もよく、55年のイーリングの製作会社としての終焉まで映画を撮り続けた作家であり、日本でもそれなりに作品が公開されている。しかしその後ソフト化もされず、今や見られることのない作家になっている。イーリングでの位置はまったく正反対であるが、今や見られない作家であるという意味では共通する。ディアデンについてはアメリカのクライテリオンで、ロンドンを舞台にした作品がボックス化されるなど再評価もされつつある気がするが、ヘイマーについてはその兆しも見えない。