映画の中のジャズ、ジャズの中の映画 Text by 上島春彦
第35回 アメリカ60年代インディペンデント映画とジャズ   その2 クラーク、ワイズマン、そして『クール・ワールド』
オリジナル・スコア盤『クール・ワールド』
映画『クール・ワールド』には残念ながらサントラ盤は存在しないが、画面上にクレジットを読むと音楽監督的な役割を果たしているのがピアニストのマル・ウォルドロンであるとわかる。他のパーソネルはユセフ・ラティーフ(テナー・サックス)、アーロン・ベル(ベース)、アート・テイラー(ドラムス)、そしてトランペッター、ディジー・ガレスピー。超一流のジャズメンを揃えており、吉田さんのコラムにも書かれていたが監督のジャズへの見識の高さがうかがえる。まあ考えてみれば『ザ・コネクション』を監督した人だし、生粋のニューヨーク人種だし、前衛舞踊を出発点にしたアーチストでもあるわけだから当然といえば当然なのだろう。
だが上記のキャリアを概観しても、それほどジャズとのつながりが強調されていないのは残念だ。執筆者がそっち方面に明るくなかったに違いない。クラーク自身は近年オーネット・コールマンをテーマにしたヴィデオ作品を製作監督しており、ジャズへの興味は一貫している模様。しかし監督としてのクラークをジャズへの関心から読み解こうとしてもなかなか情報が集まらず、現在のところそういう方法は私には取れない。あくまで『クール・ワールド』という一作品を媒介してのみ現れるジャズの要素を紹介していくことになる。 上記のメンバーによる録音は映画で聴かれる断片的な音源しかなく、極めて惜しいが、その代わりガレスピーがメンバーを一新して再録音した盤が残されている。タイトル「オリジナル・スコア クール・ワールド」“Original Score from the Motion Picture the Cool World”(PHILIPS)、ガレスピーをリーダーとするクインテット(五重奏団)による演奏である。パーソネルはガレスピーの他、ジェームズ・ムーディ(サックス、フルート)、ケニー・バロン(ピアノ)、クリス・ホワイト(ベース)、ルディ・コリンズ(ドラムス)となっている。オリジナル・スコア盤とはサントラに使われた譜面を使って再録音したアルバムを指す言葉であり、この方が音質は良くなるので昔は重宝されたのだが現在ではそういう意味の利点は存在しない。また、音質が多少悪くてもサントラ盤の方が好き、という映画音楽ファンは元々多かった。
さて、それで本作の場合だが何ぶんアドリブが命のジャズだから、譜面にされたそれぞれのテーマ部は同じでもメンバーが異なればそれなりに雰囲気は変る。とりわけピアノがウォルドロンからケニー・バロンになって明るさが増し、それはそれで面白いがやはりサントラ盤は聴いてみたかったと言いたくもなる。まあ、そういう無いものねだりはこれくらいにして以下ナット・ヘントフ執筆による本盤のライナーノーツをじっくり読んでみたい。