高度資本主義社会における人類の繁栄を
裏側から逆照射した黙示録的な傑作!!
残念なことに2000年代のイタリア映画ルネッサンスを私たちは知りません。かつてロッセリーニ、フェリーニ、ヴィスコンティ、ベルトルッチといった巨匠たちを輩出し世界をリードしたイタリアは21世紀の今、再びヨーロッパ映画界の台風の目となっています。2008年、カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した「イル・ディーヴォ」(イタリア映画祭2009で上映)と並び本作が見事グランプリを獲得、続くヨーロッパ映画賞では主要賞5冠に輝き、現代イタリア映画の底知れぬパワーを世界中の映画人にみせつけました。ネオレアリズモの伝統に根ざしたドライな描写と感情移入を許さないハードな映像の波状攻撃。マーティン・スコセッシやベン・アフレックらハリウッドの人間が最大級の賛辞を捧げた若き巨匠マッテオ・ガッローネ監督の登場はもはやひとつの事件です。

イタリア南部ナポリを本拠にかつてのマフィアをはるかに凌駕する権力と経済力を持ち、ドラッグの売買、産業廃棄物の不法処理、オートクチュール・ファッションの製造、海外不動産への投資など利潤追求を至上とする犯罪組織「カモッラ」の暗部をセンセーショナルに暴いた超重量級社会派エンタテイメント、ゴモラ。原作は2006年に出版後、イタリア国内で100万部のベストセラーとなり世界40か国以上で翻訳された『死都ゴモラ』(河出文庫)。著者のロベルト・サヴィアーノ(映画では脚本にも参加)は自らカモッラに潜入し、数々の事実を調査、巨大組織の実態を刻明にしるし発表。その為、現在では24時間警察の保護下に置かれています。

イタリアのみならず今やヨーロッパを代表する名優の地位を築いたトニ・セルヴィッロ(「湖のほとりで」「イル・ディーヴォ」)をはじめ刑務所のアマチュア劇団員や現場でスカウトした素人まで20名を超える主要キャストが奏でる裏切りのシンフォニー。「ゴッドファーザー」や「シティ・オブ・ゴッド」すら生ぬるく感じる衝撃的な場面の数々。アジアを含む全世界の広大な裏経済を巧妙に操り、無数の犠牲者を葬りつつ莫大な富を手中に収める闇の巨大組織カモッラの物語は見る者の心に戦慄の2文字を刻むことでしょう。凶悪な犯罪が渦巻くナポリを旧約聖書のエピソードで有名な、神の怒りにふれて焼かれた悪徳の街ゴモラになぞられた本作は、高度資本主義社会における人類の繁栄を裏側から逆照射した黙示録的な傑作です。