海外版DVDを見てみた 第21回『ジョーン・クロフォードの50年代』 Text by 吉田広明
ジョーン・クロフォード

『50年代のジョーン・クロフォード』DVD-BOX
筆者がDVD資料を駆使してアメリカ映画について書くようになった2000年代半ばから比べても、映画資料をめぐる状況は大きく様変わりした。当時ではここでは書けないような方法でしか入手できなかったような作品も、現在ではテレシネしたものをDVD-Rに焼き付けただけ、という簡便な形ではあるが、正規版として販売されるようになったり(ワーナー・アーカイヴ)、アメリカの古典を中心に放映するケーブルTV会社ターナー・クラシック・ムーヴィーズ(TCM)が、自社ブランドでDVDを売り出したり、元よりクライテリオンは相変わらず資料の充実した作品群を送り出しているし、前衛映画(アベル・ガンスやマルセル・レルビエなど)に特化したフリッカー・アレイ、筆者として一番関心のある時代やジャンルの珍しい作品に強いオリーヴ・フィルム(最近ではアンソニー・マン『夜のよそ者』Stranger in the nightや、脚本家フィリップ・ヨーダンの傑作の一つ、ヒューゴ・フレゴネーズ監督『吹き荒ぶ風』Blowing windを出してくれた)など強い独自色を放つレーベルも現れてきている。中でもワーナー・アーカイヴスは膨大な作品量で、タイトルだけ見ていたら何が何だかよく分からない。自分の知らない作品がまだこんなにもあるのか、と眩暈さえ覚える。

というわけで、ここからしばらくは、そうした膨大に増加しつつあるアメリカ映画のDVDの中から、その都度選択した作品について書くことにする。書いているうち一貫したテーマが出てくるかもしれないし、行き当たりばったりのままかもしれない。筆者の趣味嗜好が無意識的に反映されるだろうが、ともあれ、この膨大な未知のDVDの山を筆者なりに整理しようということだ。今回はTCMが出したボックス『1950年代のジョーン・クロフォード』Joan Crawford in the 1950’sを取り上げる。所収作品は『ハリエット・クレイグ』Harriet Craig(未、50)、『女王蜂』Queen Bee(未、55)、『枯葉』Autumn Leaves(未、WOWOWで放映、56)、『光は愛と共に』The Story of Esther Costello(57)。