和の文豪・大佛次郎が、かつて朝日新聞紙上に連載した未完の長篇史伝「天皇の世紀」。幕末から明治維新までの動乱の時代を鮮やかに描いたこの作品は、今も新しい読者を獲得しながら読み継がれている世紀のベストセラーである。1971年、朝日放送は開局20周年記念番組として、この史伝を1話完結全13話のテレビ映画として製作した。全ての日本人が激しく燃えた近代日本の夜明けを重厚かつ革新的な群像劇として映像化したのは、山本薩夫、今井正、蔵原惟繕、三隅研次、篠田正浩、佐藤純彌、吉村公三郎といった日本映画界が誇る巨匠たち。映画・演劇界のスター総出演による空前絶後の豪華なキャスティング。音楽は日本を代表する作曲家・武満徹。ナレーションは名優・滝沢修が担当しています。
田村高廣(阿部伊勢守)、田村正和(橋本左内)、田村亮(久坂玄瑞)、志村喬(吉田東洋)、丹波哲郎(田中河内介)、津川雅彦(木村摂津守) 佐藤慶(島津久光)、天知茂(長野主膳)、東千代之介(橋本実麗)、木村功(川路聖謨)、原田芳雄(吉田寅次郎、松陰)、加藤嘉(武田耕雲斎) 北村和夫(山路弥左衛門)、加藤武(肥田浜五郎)、露口茂(尾高長七郎)、山口崇(坂本竜馬)、細川俊之(武市瑞山)、伊丹十三(岩倉具視) 織本順吉(西郷隆盛)、原田大二郎(高杉晋作)、江守徹(富蔵:水夫)、峰岸徹(藤田小四郎)、村野武範(中山忠光)、高橋長英(金子重輔) 伊吹吾郎(吉村虎太郎)、下條アトム(武田魁介)、蜷川幸雄(高畑胤正)、柳生博(久世大和守)、石橋正次(毛利定広)、香川京子(野村望東尼)
ペリーの目的はまず将軍宛の手紙を幕府の全権に手渡すことであった。 アメリカの力の外交の前に江戸城内の評定は定まらず、大混乱に陥った。 海岸を固める諸大名の陣屋からは注進の汗馬、飛脚が絶え間なく出入りし、江戸藩下の町もにわかに修羅の巷と化した。 (監督:山本薩夫 脚本:武田敦)
吉田寅次郎が国禁を犯してまで海外に渡ろうと試みたのは、その青春の情熱と憂国の情からだった。 彼は強引に黒船に乗り込もうとするが失敗。自ら番所に出頭し、江戸送りに。 然し、この無謀とも見える行為が野火となり、やがてその弟子たちに受け継がれていく。 (監督:下村堯二 脚本:石堂淑朗)
長崎の町年寄兼鉄砲方の高島秋帆は西洋調練と砲術に優れた先覚としての役割を果たした。 彼は武州徳丸ヶ原において西洋調練と砲術を幕府方に披露し、大成功を収めた。 然し、その見聞役に蛮社の獄を起こした鳥居耀蔵がいたことが、秋帆の災となっていく。 (監督:高橋繁男 脚本:本田英郎)
鎖国の夢は完全に打ち破られ、下田には星条旗が翻った。危機に瀕した政権を巡り、保守と革新は激しく対立。 安政5年(1858年)6月19日、日米修好条約調印。井伊大老が朝廷の意向を無視して踏み切った締結だが、 それは日本にとって有利なものであったのか……。 (監督:今井正 脚本:本田英郎)
安政5年は永き泰平の夢に安んじていた徳川幕府にとり、運命的な年であった。 井伊大老は安政の大獄から桜田門外に自らの血を染めるまで一貫して、跡継ぎは紀伊、外交は攘夷と定め、一橋派追放に乗り出した。 その年、天に不吉な箒星、地には大きな地震が……。 (監督:今井正 脚本:本田英郎)
それは画期的なことであった。二百年の鎖国政策をとってきた幕府が外交全権団を海外へ送りだそうというのだ。 しかも始めての太平洋横断。シケと船酔いの戦い、アメリカ人との同居航海。 いまだ見ぬ異国への不安と期待をのせ、咸臨丸はサンフランシスコを目指す。 (監督:高橋繁男 脚本:岩間芳樹)
吹きすさぶ黒い風。流れ出る無用の流血。攘夷という名の元に繰り返される摩擦と闘争のテロリズム。 幕政への批判が法を破り、死と直結して巻き起こる暗殺、そして暗殺。ついに老中安藤信正の暗殺計画が坂下門外にて実行される。 彼ら、若きテロリスト達の目指した理想の国家とは何か。
(監督:蔵原惟繕 脚本:石堂淑朗)
血は血を呼んで死闘が繰り返された騒乱の幕末にあって、まさに歴史の一頁を書き変えた出来事、それが公武合体であった。 和宮降嫁に暗躍する長野主膳、朝権回復を画策する岩倉具視、彼らにとって15歳の将軍家茂と和宮は一体何なのであろうか。 (監督:三輪彰 脚本:岩間芳樹)
島田久光による、薩摩藩の尊攘派の粛清、寺田屋事件。 理想に燃えて起こした行動がいかなる現実を引き起こしたか。果敢にも社会の変革に挑み、時代の急流に飲み込まれ、 再び浮かび上がることの無かった人々の歴史への証言を、その悲痛なうめきを聞け。 (監督:三隅研次 脚本:早坂暁)
異人切りは相次いで起った。攘夷は時代の狂気であった。開国か攘夷か。国論は分裂し、決断は急を要した。 文久2年(1862年)生麦事件がおこり、やがて薩英戦争の勃発へ……。 日本の命運を左右する最大の危機に直面したとき、人々はいかに行動したか。そして神風は吹いたのか。
(監督:篠田正浩 脚本:早坂暁)
攘夷にはやる長州藩は、馬関を通過する外国商船を砲撃して、報復を受けた。 藩主の命により高杉晋作は、馬関防備の総指揮を執ることになった。彼は武士に限らず、 農民町民からも志のある者を募り、奇兵隊を編成する。自ら額に汗して用を営む者の決起であった!
(監督:下村堯二 脚本:新藤兼人、松田昭三)
開国か攘夷か。青年の熱と力が爆発する、国家再建論。 尊皇攘夷よ、皆が幸せになれる国家を築かんと義兵を起こして倒幕せよと。 武市半平太、坂本竜馬ら、土佐勤皇党員の激論は果てしなく続く。そして、吉田東洋が暗殺される……。 (監督:佐藤純彌 脚本:岩間芳樹)
元冶元年(1864年)3月、水戸において尊攘派の中核、田丸稲之衛門、 藤田小四郎など攘夷の志士たちにより結成された「天狗党」がやがて幕府軍に破れ、 武田耕雲斎を頭に晩秋の那珂湊を後に雪の越前鶴賀で降伏。翌元冶2年2月4日352人が処刑されるまでを描く。 (監督:吉村公三郎 脚本:新藤兼人)