日本の映画文化を足元で支えてきた名画座が減少し、DVDレンタル店においても新作中心の品揃えが当たり前となっている現在。映画史上に残る芸術的成果を成し遂げた貴重な作品群を映画館のスクリーンで鑑賞する機会は失われつつあります。“映画の國”は世界中のクラッシックな名作や日本未公開の傑作を選りすぐって皆様にお届けします。スクリーンで味わう名作は格別なことでしょう。第1弾はイタリア映画のマエストロたちによる究極の3本。ぜひ御来場下さい。
 
1970年/イタリア=フランス=西ドイツ/113分/カラー
監督:ベルナルド・ベルトルッチ   出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、ドミニク・サンダ
「ラストエンペラー」(‘87)や「シェルタリング・スカイ」(‘90)の世界的大ヒットによって巨匠の仲間入りを果たしたベルトルッチだが、彼の最高傑作は?と問われれば間違いなく本作にとどめを刺すのが正しい映画ファンの有り様ではなかろうか。現代イタリアを代表する作家モラヴィアの「孤独な青年」を基に、過去の罪にさいなまれながらファシズムに傾倒していく男の孤独と頽廃を官能的に描いた一編。「地獄の黙示録」(‘79)でアカデミー撮影賞に輝いた名キャメラマン、ヴィットリオ・ストラーロによる奇跡の映像美と19歳でヨーロッパのデカダンスを身にまとったドミニク・サンダの美貌に心をうばわれない者はいないであろう。
1970年/イタリア/92分/カラー
監督:フェデリコ・フェリー二   出演:フェデリコ・フェリー二、アニタ・エクバーグ
ネアレアリスモの正統な後継者として、「甘い生活」(‘59)や「81/2」(‘63)で現代人の苦悩や芸術家のジレンマを象徴的に描き20世紀最大の映画監督として君臨したフェリー二。この映画は作家フェデリコの通奏低音ともいえるサーカスやクラウンへの憧景をドキュメンタリー・ドラマの形式で映像化し、彼の思想と魔術が最も凝縮した形で詰めこまれたフェリー二芸術の原点であり頂点ともいえる作品である。ラストで再現される絢爛たるショーの終わりに流れるニーノ・ロータの哀しいメロディーはほろびゆく者の愁いを秘め絶品。
1959年/イタリア/140分/モノクロ
監督:ロベルト・ロッセリーニ 出演:ヴィットリオ・デ・シーカ、ハンネス・メッセマー
「無防備都市」(‘45)、「戦火のかなた」(‘46)のロッセリーニが数年の沈黙を破って発表し、見事ベネチア映画祭でグランプリを受賞した作品。我が国では過少評価されがちな1本だが、ヨーロッパではロッセリーニの最高傑作との呼び声が高い。新聞記者インドロ・モンタネリのベストセラー小説を基に1943年から1945年までのナチズムやファシズムに対するパルチザンたちの抵抗運動を描き、全体主義を痛烈に糾弾した本作は、緊迫感に満ちたサスペンスフルな描写と主役を演じたイタリアの名監督デ・シーカ(「ひまわり」‘70、「終着駅」‘53)の名演が観るものの心を激しく揺さぶります。
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