コラム 『日本映画の玉(ギョク)』 Jフィルム・ノワール覚書⑧ 『警視庁物語』の時代 その2   Text by 木全公彦
『魔の伝言板』
『魔の伝言板』ポスター
⑧『警視庁物語 魔の伝言板』(1958年6月22日公開)61分
[監督]村山新治 [脚本]長谷川公之 [撮影]佐藤三郎
[事件名]集団自動車強盗事件 [事件発生場所]飯田橋 [その他の主要なロケ地]有楽町(国際劇場)、赤坂?(キャバレー「モンテカルロ」)、足立区千住(天国旅館)、上野駅構内~上野駅周辺

深夜、3人組がタクシーに乗り込み、強盗殺人を働く。最近、頻発するタクシー強盗がまた起きたのだ。奪われたタクシーがパトロール中のパトカーを避けて木に衝突し、警官がそこから逃げる3人組を追い、その一人を逮捕した。トランクを開けると、5人目の犠牲者となったタクシーの運転手の死体を発見。捜査第一課は捕まえた犯人を訊問し、上野駅の伝言板で見知らぬ者同士が待ち合わせて犯行を繰り返している事実を突き止める。

村山新治のシリーズ3度目の登板。いつものように前作『七人の追跡者』と2本撮りの同時進行で撮影された。物語のベースになったのは、この頃頻発していた連続タクシー強盗殺人事件。冒頭からテンポよく展開し、快調な演出ぶりを見せる。複数の犯行と容疑者、犯行時間との関係を一覧表にしていくのは、視覚的にも効果的で、以後シリーズを通して地図などと一緒に度々使われることになる。

クライマックスの上野駅の伝言板での張込み(たぶん隠し撮り)から、ビンゴホールでの捕物場面へと展開する一連の流れは、スリリングでサスペンスが盛り上がる。ビンゴホールというのも今は見られなくなった風俗でなかなか興味深い。

曽根晴美が滝沢和実名義でチョイ役出演。公式記録にはないから、おそらく本格的デビューをする前の出演だろう。大村文武は前作に引き続き刑事役。石島房太郎が刑事役で珍しく台詞が多い。