コラム 『日本映画の玉(ギョク)』 Jフィルム・ノワール覚書⑧ 『警視庁物語』の時代 その2   Text by 木全公彦
『追跡七十三時間』
『追跡七十三時間』
③『警視庁物語 追跡七十三時間』(1956年12月11日公開)53分
[監督]関川秀雄 [脚本]長谷川公之 [撮影]星島一郎
[事件名]ガソリンスタンド殺人事件 [事件発生場所] 国道沿いのガソリンスタンド [その他の主要なロケ地] 品川八ツ山下、本郷三丁目(東大解剖室)、荒川堤(?)、上野、新橋(やきとりキャバレー)、浅草?(連れ込み宿)、山谷?(ドヤ)

深夜のガソリンスタンドで拳銃強盗殺人事件が発生する。警視庁機動捜査陣が現場検証をする。撃ち込まれた銃弾は2発、被害金額は3万5千円余り。ガソリンスタンドの勤務日報から最後の車はタクシーと判明し、そのナンバーが分かる。続いて同夜、もう一件の殺人事件の報が入る。被害者はタクシーの運転手。状況から犯人は客を装い、強盗殺人に及んだものだと推定され、さらに左利きであることが分かった。

シリーズ3作目と4作目を担当するのは、ベテラン関川秀雄。さすがに安定感があり、前2作よりもロケーションをふんだんに盛り込んでセミドキュの効果を発揮している。新橋あたりのショウ・キャバレーの出しものやドヤ街の描写など、風俗的にも興味深い。

シリーズを通してレギュラーとして刑事を演じている花沢徳衛が、本作は例外的にモグリの医者の役を演じている。今井俊二(のち今井健二)はデビューしたばかりの新人で本作が2作目。のち犯人・刑事のほか、幅広い役を演じてセミ・レギュラーとして出演する。