コラム 『日本映画の玉(ギョク)』 三國連太郎『台風』顛末記 【その4】   Text by 木全公彦
『松本清張アワー』
三國連太郎がこの一連の騒ぎをどう決着つけたかだが、『台風』のメジャー配給が絶望的になった段階で、三國は自身が設立した日本プロの役員を辞しただけでなく、東映との恵まれた条件での専属契約も打ち切りにして、再びフリーになることを選ぶ。ここが三國連太郎という役者の不思議なところだ。その後も三國はフリーの立場で東映の作品に出演するから(『脅迫(おどし)』『愛欲』『地獄の掟に明日はない』等)、『台風』を配給するという約束を反故にした腹いせに東映との契約を打ち切ったわけではなく、単に任侠映画路線へとシフトチェンジする東映の製作方針に対して、〈やくざ映画は自分の柄ではないし、会社の企画に従わない役者が残っても仕方がない〉というのが、フリーになる理由だったらしい。

フリーになった三國は、松本清張の原作の1話完結(30分)テレビドラマ『松本清張アワー』(関西テレビ)全13回に主演する。女優の名を冠にした1話完結の連続テレビドラマは数多くあるが、男優の名を冠にした連続テレビドラマは珍しく、それも原作者の名を冠した1話完結の連続テレビドラマに通して主演するというのは稀有なことだった。

『松本清張アワー』(途中から『松本清張シリーズ』に改題)全13回のデータは次のとおり。

『松本清張アワー』
(1965年10月5日~1966年1月4日、関西テレビ製作、フジテレビ系列放映、毎週火曜日、夜9時~9時30分)

1.『支払い過ぎた縁談』(1965年10月5日放映)
脚本=土井行夫 演出=水野匡雄
出演=三國連太郎、丘さとみ

2.『ある小官僚の抹殺』(1965年10月12日放映)
脚本=田村孟 演出=水野匡雄
出演=三國連太郎、大塚道子、岩村百合子、戸浦六宏

3.『二階』(1965年10月19日放映)
脚本=不詳 演出=水野匡雄
出演=三國連太郎、楠侑子、佐々木すみ江

4.『弱味』(1965年10月26日放映)
脚本=松坂三郎 演出=水野匡雄
出演=三國連太郎、上田恵子、石山健二郎、楠義孝、小倉尊七

5.『いびき』(1965年11月2日放映)
脚本=高橋玄洋 演出=水野匡雄
出演=三國連太郎、山茶花究、榊ひろみ、小沢昭一、大村崑

6.『一年半まて』(1965年11月9日放映)
脚本=不詳 演出=水野匡雄
出演=三國連太郎、佐野浅夫、長岡輝子、山村弘三、桜井良子

7.『怖妻の棺』(1965年11月16日放映)
脚本=不詳 演出=水野匡雄
出演=三國連太郎、村田知栄子、紅新子、梅津栄、信欣三、高森和子

8.『証言』(1965年11月23日放映)
脚本=不詳 演出=水野匡雄
出演=三國連太郎、川尻則子、桜井功、垂水悟郎、三島謙

9.『或る“小倉日記”伝』(1965年12月7日放映)
脚本=春田耕三 演出=水野匡雄
出演=三國連太郎、松下達夫、吉行和子、吉田義夫

10.『坂道の道』(1965年12月14日放映)
脚本=花登筐 演出=水野匡雄
出演=三國連太郎、黒田絢子

11.『青のある断層』(1965年12月21日放映)
脚本=春田耕三 演出=水野匡雄
出演=三國連太郎、下元勉、本間文子、鶴丸睦彦

12.『部分』(1965年12月28日放映)
脚本=不詳 演出=水野匡雄
出演=三國連太郎、松丘与志雄、丹阿弥谷津子、森本たか子

13.『厭戦』(1966年1月4日放映)
脚本=宮本研 演出=水野匡雄
出演=三國連太郎、日高澄子、桜井良子、錦織厚子