第14回 A・I・ベゼリデス、バトジャック・プロ






黒海沿岸サムスン(現トルコ領)出身のギリシャ系アメリカ人作家A・I・(アルバート・アイザック・)ベゼリデスは、1908年生まれということなので、再来年には100歳になる伝説の作家である。彼の著作は日本語には翻訳されていない。また小説家としても映画脚本家としてもほとんど論じられることもない。

映画マニアであれば、カルト・ムーヴィー『キッスで殺せ』(1955)あるいは『危険な場所で』(1951)の脚本家としてベゼリデスの名を認知しているかもしれないが、多くの人は『キッスで殺せ』と聞いても、原作者ミッキー・スピレイン(7月17日死去。享年88歳)や、映画版の監督ロバート・オルドリッチの名前しか連想しないのではないだろうか。だがオルドリッチ監督も認めるように、映画版『キッスで殺せ』は、むしろマイク・ハマーもののパロディであり、その過激な風刺性はむしろA・I・ベゼリデスの功績に帰せられる。詳細は紀伊國屋書店発売『フィルム・ノワール傑作選』DVD−BOX収録『キッスで殺せ』の封入リーフレットを参照。

英語圏でもベゼリデスに関する研究書は存在しないが、ベゼリデスに言及した書物に、ウディ・ハウト著『傷心と酒:ハリウッドにおけるハードボイルド作家たちの運命』(Serpent's Stail,2002)がある。第1章でハメットとチャンドラー、第2章でホレス・マッコイとW・R・バーネット、第3章でポール・ケインとジェイムズ・M・ケイン、第4章でコーネル・ウルリッチ(ウィリアム・アイリッシュ)、第5章でジム・トンプソンとデイヴィッド・グーディス、第6章でベゼリデス、ダニエル・マナリング、ジョナサン・ラティマー(ピーター・コフィン)、リー・ブラケット、第7章でエドワード・バンカー、第8章でエルモア・レナードとジェイムズ・エルロイ、第9章でジェラルド・ペティヴィッチ、第10章でジェイムズ・クラムリー、ジェイムズ・リー・バーク、ウォルター・モズリー、サラ・パレツキー、トニー・ヒラーマン、ジェイムズ・W・ホール、ジョーゼフ・ウォンボー、ドナルド・E・ウエストレイク、第11章でバリー・ギフォード、マイケル・コネリー、デニス・レヘイン、ジョージ・P・ペレカノスに言及されている。

リー・サーヴァーによるきわめて貴重なベゼリデスのインタヴューは、リー・サーヴァー著『脚本家:言葉が映像になる』(The Main Street Press,1987)に掲載された後、エド・ゴーマン、リー・サーヴァー、マーティン・H・グリンバーグ編『The Big Book of Noir』(Carroll &Graf,1998)にも再録された。『脚本家』にはベゼリデスのほか、ヒッチコック作品で知られるチャールズ・ベネット、『若草の頃』(1944)などのアーヴィング・ブレッカー、『民衆の敵』(1931)などのジョン・ブライト、『わが谷は緑なりき』(1941)などのフィリップ・ダン、『初恋合戦』(1938)などのウィリアム・ルドウィグ、『我輩はカモである』(1933)などのナット・ペリン、『駄々っ子キャグニー』(1933)などのアレン・リヴキン、『虎鮫』(1932)などのウェルズ・ルート、『トップ・ハット』(1935)などのアラン・スコット、『私はゾンビと歩いた!』(DVD題。1943)などのカート・シオドマク(クルト・ジオドマク)、『盗まれた青春』(1946)などのキャサリン・ターニーの談話を収録。『The Big Book of Noir』は映画以外のノワールも扱った本だが、フリッツ・ラング、『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(DVD題。1956)の脚本家でもある作家ダニエル・マナリング(ジェフリー・ホームズ)のインタヴューも掲載。

今年3月の英国ブラッドフォード映画祭ではA・I・ベゼリデスをめぐるドイツ=ギリシャ合作記録映画『バズ Buzz』(未。2005。120分)が上映された。監督はスピロ・N・トラヴィラス。ジュールズ・ダッシンや、『キッスで殺せ』のクロリス・リーチマンも出演。

またアメリカン・シネマテーク主宰の4月の「フィルム・ノワール映画祭」ではビデオ映画『A・I・ベゼリデスの長距離』(未。2005。61分)が上映された。『長距離 The Long Haul』というのは『夜までドライブ』(ビデオ題。1940)の原作となったベゼリデスの1938年頃に執筆したハードボイルド小説の題名。こちらの監督はフェイ・エフロシニ・レリオス。ジュールズ・ダッシン、バリー・ギフォード、ミッキー・スピレインらが出演。

そろそろ日本でもベゼリデスが論じられ始めてもよいのではないだろうか。嬉しいことに、フォックス社スタジオ・クラシック・シリーズの1枚として、ベゼリデスが原作・脚本を手がけた日本未公開・未放映の『深夜復讐便』(1949)のDVDが8月18日発売

同作DVDは、ドイツでは1月9日に、オーストラリアでは1月18日に、ブラジルでは1月24日に、英国では3月13日に発売された。

『深夜復讐便』米クライテリオン盤DVDレヴュー dvdbeaver.com / dvdtalk.com / digitallyobsessed.com

こうして長らく日本未公開、未放映のフィルム・ノワールの傑作が、日本語字幕付きで手軽に観られるようになりつつあるのは喜ばしい。もっとも、まだまだ潜在的ファンに向けての啓蒙が足りないようにも思う。

『現金に体を張れ』(1956。監督スタンリー・キューブリック、脚本ジム・トンプソン)
『キッスで殺せ』(1955。監督ロバート・オルドリッチ)
『裸のキッス』(1964。監督サミュエル・フラー)
『危険な場所で』(1952。監督ニコラス・レイ)
『ひどい仕打ち』(未。1948。監督アンソニー・マン)
『長身の標的』(未。1951。監督アンソニー・マン、脚本ダニエル・マナリング)
『深夜復讐便』(DVD題。1949。監督ジュールズ・ダッシン)

ちなみに『スラント・マガジン』映画部門編集者エド・ゴンザレスのお気に入り映画は以下の通り。

1『ナッシュビル』(1975。監督ロバート・アルトマン)
2『アンダーグラウンド』(1995。監督エミール・クストリッツァ)
3『マルホランド・ドライブ』(2001。監督デイヴィッド・リンチ)
4『孤独な場所で』(1950。監督ニコラス・レイ)
5『生きるべきか死ぬべきか』(1942。監督エルンスト・ルービッチュ)
6『悲しみは空の彼方に』(1959。監督ダグラス・サーク)
7『フリークス』(1932。監督トッド・ブラウニング)
8『情事』(1960。監督ミケランジェロ・アントニオーニ)
9『花様年華(かようねんか)』(2000。監督ウォン・カーウァイ)
10『2001年・宇宙の旅』(1968。監督スタンリー・キューブリック)
11『ゲームの規則』(1939。監督ジャン・ルノワール)
12『アギーレ・神の怒り』(1972。監督ヴェルナー・ヘルツォーク)
13『スリ』(1959。監督ロベール・ブレッソン)
14『ジョン・カーペンターの要塞警察』(DVD題。1976。監督ジョン・カーペンター)
15『エル』(1952。監督ルイス・ブニュエル)
16『13回の新月のある年に』(DVD題。1978。監督R・W・ファスビンダー)
17『吸血ギャング団』(特殊上映題。1915。監督ルイ・フイヤード)
18『男性・女性』(1966。監督ジャン=リュック・ゴダール)
19『シャドー』(1982。監督ダリオ・アルジェント)
20『ジェニーの肖像』(1948。監督ウィリアム・ディターレ)

以下は、同誌スタッフ批評家ニック・シェイガーのお気に入り。

1『ギャンブラー』(1971。監督ロバート・アルトマン) 2『ガルシアの首』(1974。監督サム・ペキンパー) 3『ウエスタン』(1968。監督セルジョ・レオーネ) 4『狩人の夜』(1955。監督チャールズ・ロートン) 5『天国の日々』(1978。監督テレンス・マリック) 6『シャイニング』(1980。監督スタンリー・キューブリック) 7『アギーレ・神の怒り』(1972。監督ヴェルナー・ヘルツォーク) 8『殺しの分け前/ポイント・ブランク』(1967。監督ジョン・ブアマン) 9『サムライ』(1967。監督ジャン=ピエール・メルヴィル) 10『生きる』(1952。監督・黒澤明) 11『カンバセーション…/盗聴…』(1974。監督フランシス・フォード・コッポラ) 12『ストーカー』(1979。監督アンドレイ・タルコフスキー) 13『黒い罠』(1958。監督オーソン・ウェルズ) 14『裏切りの街角』(1949。監督ロバート・シオドマク) 15『マリア・ブラウンの結婚』(1979。監督R・W・ファスビンダー) 16『アウトロー』(1976。監督クリント・イーストウッド) 17『さすらいの二人』(1975。監督ミケランジェロ・アントニオーニ) 18『憂鬱な楽園』(1996。監督・侯孝賢) 19『天才マックスの世界』(DVD題。1998。監督ウェス・アンダーソン) 20『キング・オブ・コメディ』(1983。監督マーティン・スコセッシ)

ベゼリデス関連のDVDといえば、「第2回」「第9回」で書いたように、7月18日発売の米ワーナーの『フィルム・ノワール古典コレクション第3巻』には、ニコラス・レイ監督、ベゼリデス脚本の『危険な場所で』(1952)が収録される。粗暴な刑事を演じるのは、アンソニー・マン監督の『最前線』(1957)、『神の小さな土地』(1958。公開題『真昼の欲情』)のロバート・ライアン。他の収録作は、アンソニー・マン監督の未公開作『国境事件』(1949)、『替え玉殺人計画』(放映題。1951)、『湖中の女』(1951)、『脅迫者』(ビデオ題。1951)。『脅迫者 The Racket』はジョン・クロムウェル監督(応援監督はメル・フェラーとミノラス・レイ)の未公開作。ブリテイン・ウィンダスト監督(実はラウル・ウォルシュが監督した)、ハンフリー・ボガート主演の同じ邦題のフィルム・ノワール『脅迫者 The Enforcer』(1951)ではないので要注意。

  このほかベゼリデスの『長距離』に基づく前述の映画『夜までドライブ』レヴュー)もDVD化されている。こちらも『危険な場所で』で盲目の孤独な女性を演じたアイダ・ルピノが出演。その他の主要出演者はジョージ・ラフト、アン・シェリダン、ハンフリー・ボガート。

ベゼリデスがロバート・ロッセンと共に脚本にクレジットされているフィルム・ノワールに『砂漠の怒り』(1947)がある。監督は『三人の狙撃者』(1954)のルイス・アレン。主演は、『記憶の代償』(DVD題。1946)のジョン・ホディアク、『呪いの血』(DVD題。1946)のリザベス・スコット、『殺人者』(1946)のバート・ランカスター。撮影は『復讐は俺に任せろ』(1953)や『麗しのサブリナ』(1954)のチャールズ・ラングと『天国は待ってくれる』(1943)のエドワード・クロンジャガー。音楽は『呪いの血』、『殺人者』、『赤い家』(1947)、『真昼の暴動』(1947)、『扉の影の秘密』(1948)のミクロシュ・ロウジャ。

ルイス・アレン監督のフィルム・ノワールといえばフランク・シナトラ出演の『三人の狙撃者』があまりにも有名だが、同作はパブリック・ドメインのメーカー各社でDVD化されている。アレン監督のもう1本のフィルム・ノワール『暗黒の叫び』(1955)の脚本は、ダニエル・マナリング(ジェフリー・ホームズ名義)とベゼリデスが手がけている。原作はジェイムズ・ベンソン・ナブロ。 主演は『死刑五分前』(1954)のエドワード・G・ロビンソン、『悪徳警官』(1954)のジョージ・ラフト、『罠』(1949)のオードリー・トッター。撮影は『無警察地帯』(1955)のハリー・ノイマン。『暗黒の叫び』の日本公開は1958年1月3日だが、オリジナルは85分なのに対して、45分の短縮版で公開されたらしい。

ベゼリデスは、ロバート・D・ウェッブ監督の『十二哩の暗礁の下に』(1953)の脚本も手がけている。パブリック・ドメインの同作のDVDは何種類か出ているが、オリジナルはシネマスコープなのに対し、スタンダード・サイズで収録されている場合もあり、褪色や音の劣化も目立つ。修復版のリリースが望まれる。撮影は『砂漠の怒り』のエドワード・クロンジャガー。バーナード・ハーマンの音楽も素晴らしい。ベゼリデスは、このほか、シオドア・プラット原作、『モロッコ慕情』のカーティス・バーンハート監督、ロナルド・レーガンとアン・シェリダン共演の『Juke Girl』(未。1942)、リオン・ユリス原作、ロバート・オルドリッチ監督、ロバート・ミッチャム、スタンリー・ベイカー共演の『怒りの丘』(1959)の脚本も手がけているが、まだDVD化されていない。

ベゼリデスが脚本に関わったTV作品に、サミュエル・ブラスの『復讐』(デヴィッド・クック編『戦後推理小説・ベスト15 1945-1959)』、荒地出版社)に基づくTVドラマ『ヒッチコック劇場』シーズン1第18話『復讐』(初放映1955年10月2日)がある。フランシス・コックレルと共同脚色。演出はヒッチコック。主演は『キッスで殺せ』でマイク・ハマーに扮したラルフ・ミーカー。共演はヴェラ・マイルズ。同作はユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン発売のDVD『ヒッチコック劇場 第3集』のディスク1に収録されているが現在廃盤。これはモナコ公国のレーニエ大公と結婚し王妃となったお気に入りの女優グレイス・ケリーを失った後のヒッチコックがマイルズを起用した初の作品。この後、彼女は『間違えられた男』(1956)、『サイコ』(1960)に出演することになる。マイルズはさらにジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の『捜索者』(1956)、『リバティ・バランスを射った男』(1962)にも出演するが大スターにはなれなかった。彼女の出演作で是非ともDVD化してほしいのはジャック・トゥルヌール(ターナー)監督の西部劇『法律なき町』(1955)とロバート・オルドリッチ監督の『枯葉』(未。1956)である。

その他、ベゼリデスが原作を手がけたTVドラマには、『ローハイド』第6シーズンのテッド・ポスト演出の第158話(初放映1964年1月2日)『シャイアンの砦Incident at Ten Trees』などがある。またバーバラ・スタンウィック主演の人気TV西部劇『バークレイ牧場』(1965−1969)はベゼリデスとルイ・F・エデルマンの原案である。『バークレイ牧場』シーズン1(1965−66)のDVD−BOX(5枚組)は米フォックス社から5月16日に発売された。30話収録。収録時間は計1530分。第3話および第12話の演出はジョーゼフ・H・ルイス。第4話および第6話の演出はポール・ウェンドコス。キャサリン・ロス出演の第7話の演出はリチャード・C・サラフィアン。第8話およびチャールズ・ブロンソン出演の第9話、第23話の演出はポール・ヘンリード。第19話、第20話、第21話の演出はマイケル・リッチー。『ボディ・アンド・ソウル』(ビデオ題。1949)、『情無用の街』(1948)、『深夜復讐便』に出演していたジョーゼフ・ペヴニーは第14話を演出している。

『バークレー牧場』エピソード・ガイド

米パラマウント社からは、ウォルター・ヴァン・ティルバーグ・クラークの小説に基づく、RKOから借り出されたロバート・ミッチャム主演のシネマスコープ西部劇『血ぬられし爪あと/影なき殺人ピューマ』(放映題。1954)のスペシャル・コレクターズ・エディションDVDが6月6日発売。

これはウィリアム・A・ウェルマン監督の異色西部劇。原作はウォルター・ヴァン・ティルバーグ・クラーク(1909‐71)の小説『The Track of the Cat』(1949)。ウェルマンはもう1本、彼の最も有名な小説(1940)に基づく私刑のおぞましさを扱った異色西部劇『牛泥棒』(DVD題。1943)を撮っている。ウォルター・ヴァン・ティルバーグ・クラークについては、ジャクソン・J・ベンソン著『オックスボウ・マン:ウォルター・ヴァン・ティルバーグ・クラーク伝』(ネヴァダ大学出版、2004)をも参照。今年の9月にペーパーバックが出る予定。

『血ぬられし爪あと/影なき殺人ピューマ』の特別版DVDにはベンソンによる原作者の解説映像も収録されている。『血ぬられし爪あと/影なき殺人ピューマ』の製作はジョン・ウェインのウェイン=フェロウズ・プロ。これが同プロ最後の作品となった。意図的に色彩を抑えた撮影はウィリアム・H・クロージャー。導入部でミッチャムが着る真っ赤な防寒コートは異様に目を引く。一部での評価は高いがきわめて異色で西部劇と呼んでよいのかどうかもためらわれるほどだ。ベゼリデスの第一稿を受け取ったウェルマンはこの台本を変えようとしなかったが、ベゼリデスは書き込みすぎているので削る必要があると何度も主張した。ミッチャム扮する心のねじれたカートが、一度も画面に姿を見せないクーガないしはピューマ(映画の中では「cat」もしくは「black panther」と呼ばれる)を追い求め一人雪山をさまようというドラマが軸になるのかと思うと、実はその挿話よりも、長男の死をきっかけに崩壊し始める、ビューラ・ボンディ扮する自己中心的で頑固な母親の牛耳る牧場のブリッジス家の内部での人間関係のもつれを描く室内劇的な展開と、最後に残されたタブ・ハンター扮する、おとなしい三男ハロルドの自立のドラマに劇的焦点がおかれている。

『血ぬられし爪あと/影なき殺人ピューマ』米パラマウント盤DVDレヴュー

こちらのレヴューには、カートが読むキーツの詩「When I have Fears that I may Cease to Be」も引用されている。この詩はノエル・カワード原作、デイヴィッド・リーン監督の『逢びき』(1946)にも出てくる。

ダーティ工藤による感想

『血ぬられし爪あと/影なき殺人ピューマ』と同時に発売されたウェイン=フェロウズ・プロ作品のDVDは、アンドルー・V・マクラグレン監督、バート・ケネディ脚本の『金庫室の男』(未。1956)、ジョン・ファロウ監督の『太陽の略奪者』(未。1953)、ジェイムズ・エドワード・グラント監督、クライド・ベイティ・サーカス、作家のミッキー・スピレインが本人役で出演している『恐怖のサーカス』(1954)。クライド・ベイティ(1903−65)はライオン調教師、猛獣調教師。猛獣の檻に入り、鞭とピストルを手に猛獣と闘う芸で有名だった。1945年に自らのサーカス団を結成、1958年にコール兄弟サーカス団と合併、当時、米国最大の巡業サーカス団だった。ウェイン=フェロウズ・プロの4作品収録のDVD−BOX『ジョン・ウェインのサスペンス・コレクション』も発売。

ジョン・ウェイン・コレクションDVD

ジョン・ウェインと、RKO社、パラマウント社の製作者だったロバート・フェロウズ(1903−69)の独立系映画製作会社ウェイン=フェロウズ・プロは1952年3月に設立された。1954年に、ウェインはフェロウズの権利を買い上げ、ウェイン=フェロウズ・プロをバトジャック・プロと改名した。バトジャックの名はウェインがゲイル・ラッセルと共演した『怒涛の果て』(1948。原題『赤魔女号の航跡』)の中に出てくる帆船「赤魔女号」を所有する船舶会社名から採られている。ジョン・ウェインの長男マイケル・ウェイン(1934−2003)がジョン・ウェイン製作・監督・主演、ジェイムズ・エドワード・グラント脚本の『アラモ』(1960)製作後の1961年、バトジャック・プロの代表となり、マイケルの死後はその妻グレッチェンが引き継いでいる。

『アラモ』製作背景についての記事 1 / 2
フランク・T・トンプソン著『アラモ:叙事映画の図解物語』(W.W. Norton & Company,2004)も参照。

すでに、ウェイン=フェロウズ・プロ製作、ジョン・ファロウ監督、ジェイムズ・エドワード・グラント脚本、ジョン・ウェイン主演の3D西部劇『ホンドー』(1953, レヴュー)はDVD発売済み。当初グレン・フォード主演の予定だったが、監督のファロウとそりが合わず、やむなくウェインが主演した。

ウェイン=フェロウズ・プロ作品は昨年8月2日にウィリアム・A・ウェルマン監督の『紅の翼』(1954, レヴュー avrev.com / dvdtalk.com / digitallyobsessed.com)と『男の叫び』(1953, レヴュー)がジョン・ウェイン・コレクション第一弾として発売された。共にジョン・ウェインが出演。

さらにバトジャック・プロ製作(マイケル・ウェイン)、アンドルー・V・マクラグレン監督、ジェイムズ・エドワード・グラント脚本、ジョン・ウェイン主演の『マクリントック』(1963)スペシャル・コレクターズ・エディションDVD、同じくバトジャック・プロ製作(アンドルー・V)、バッド・ベティカー監督、バート・ケネディ脚本、ランドルフ・スコット主演の『七人の無頼漢』(1956, レヴュー digitallyobsessed.com / sensesofcinema.com)のスペシャル・コレクターズ・エディションDVDも発売された。映画批評家ジム・キッチェズの音声解説付き。ちなみにアンドルー・V・マクラグレンは『男の叫び』、『紅の翼』、『血ぬられし爪あと/影なき殺人ピューマ』などの助監督を経て、バトジャック・プロ製作、バート・ケネディ脚本の西部劇『その男を撃て』(未。1956)で監督に昇進した。

バトジャック・プロ代表グレッチェン・ウェインのDVD発売に関するインタヴュー