第3回 サミュエル・ベケット生誕100年とジャン・ジュネ没後20年










20世紀演劇の巨匠サミュエル・ベケットは1906年4月13日に生まれた。したがって今年は生誕100年にあたる。9月末には日本サミュエル・ベケット研究会による国際シンポジウムが行なわれる。

サミュエル・ベケット唯一の映画脚本作は、アラン・シュナイダー監督の『フィルム』(未。1965。20分)である。主演はバスター・キートン。画質のそれほどよくない海賊版DVDが売られている。

『フィルム』抜粋(86秒間)/同MPEG動画ほか

ベケットと演出家アラン・シュナイダーの往復書簡集(Harvard University Press,2000)。シュナイダーは1984年3月、ベケットに手紙を出しに行く途中、事故で亡くなった。

アイルランドの映画誌『フィルム・ウエスト』22号掲載の映画史家ケヴィン・ブラウンロウのベケットとの面会記

ジル・ドゥルーズの『フィルム』論「最も偉大なるアイルランド映画」は、『批評と臨床』(河出書房新社)に収録。

ジェイムズ・ノウルソン『ベケット伝・下』(白水社)の163〜165頁に、『フィルム』に関する記述がある

ベケットTV作品のビデオ販売

『ベケット・オン・フィルム』(未。2000)DVD集(19作品収録)

『ゴドーを待ちながら』(監督マイケル・リンゼイ=ホッグ、132分)
『わたしじゃない』(監督ニール・ジョーダン、出演ジュリアン・ムーア、15分)
『芝居 下書き I 』(監督キーロン・J・ウォルシュ、19分)
『オハイオ即興劇』(監督チャールズ・スタリッジ、ジェレミー・アイアンズ一人二役、15分)
『クラップの最後のテープ』(監督アトム・エゴヤン、出演ジョン・ハート、55分)
『なに どこ』(監督ダミアン・オドネル、12分)
『あしおと』(監督ウォルター・アスムス、27分)
『行ったり来たり』(監督ジョン・クロウリー、6分)
『言葉なき行為 I 』(監督カレル・ライス、音楽マイケル・ナイマン、22分)
『しあわせな日々』(監督パトリシア・ロゼマ、79分)
『カタストロフィ』(監督デイヴィッド・マメット、ジョン・ギールグッド最後の映画出演作、16分)
『芝居 下書き II 』(監督ケイティ・ミッチェル、35分)
『息』(監督ダミアン・ハースト、45秒)
『あのとき』(監督チャールズ・ギャラッド、15分)
『勝負の終わり』(監督コナー・マクファーソン、84分)
『言葉なき行為 II 』(監督エンダ・ヒューズ、9分)
『モノローグ一片』(監督ロビン・ルフェーヴル、19分)
『芝居』(監督アントニー・ミンゲラ、16分)
『ロッカバイ』(監督リチャード・エア、14分)

Beckett on Film

Documentary-Video

『わたしじゃない』のジュリアン・ムーアの「口」の画像

アイルランド映画協会(IFI)のベケット特集上映

一方、20世紀フランス演劇界の大物ジャン・ジュネが亡くなったのは1986年4月15日。したがって今年は没後20年にあたる。というわけで、ここでジュネ関連のDVDをいくつか紹介しておきたい。

ジャン・ジュネ唯一の映画監督作『愛の唄』(未。1950。25分)は、英BFIでDVD化されている。研究書『The Cinema of Jean Genet: UN Chant D'Amour 』(BFI,1991)の著者ジェイン・ジャイルズと『ラブ&デス』(1997)の監督リチャード・クウィートニオウスキのコメンタリー付き。

ジョーゼフ・ストリック(1923年7月6日生まれ)は、ジャン・ジュネの戯曲『バルコン』(1956年執筆。今年で50周年)を映画化(未。1963)した。

浅田彰【ジュネの『バルコン』を観る】

アンソニー・マン監督の『最前線』(1957)、『神の小さな土地』(公開題『真昼の欲情』。1958)の脚本家ベン・マドウが脚色で協力している。マドウの経歴については紀伊國屋書店から近日発売予定の上記2作国内盤DVDの解説を参照。主演はシェリー・ウィンターズ(2006年1月14日没)、ピーター・フォーク。

製作者のルイス・アレンは、有名なブロードウェイのプロデューサーで、ジャッキー・マクリーン(2006年3月31日没)も出演した、シャーリー・クラークの『ザ・コネクション』(未。1962)やピーター・ブルックの『蝿の王』(未。1963。1990年版もルイス製作)やトリュフォーの『華氏451』(1966)の製作者でもある。DVDは米イメージ・エンターテインメントと英アロウ・フィルム・ディストリビューターズより発売。

ストリックは、『フィルム』の編集も担当したシドニー・メイヤーズ、ベン・マドウと『野蛮な眼』(未。1960)を共同製作・監督している。同作については上島春彦+遠山純生著『60年代アメリカ映画』(エスクァア マガジン ジャパン、2001)に上島春彦の解説がある。 『野蛮な眼』の米イメージ・エンターテインメント盤DVDには、ストリック監督の21分の短編記録映画『ミライ地区の退役軍人インタヴュー』(1970)も収録されている。これは、1968年3月16日の米軍による南ヴェトナムのミライ地区(ソンミ村)での村人数百人虐殺の検証で1971年度アカデミー最優秀短編記録映画賞に輝いた。

  このほか、ストリックはジェイムズ・ジョイス原作の『ユリシーズ』(1967)や『若き芸術家の肖像』(未。1977)、『ヘンリー・ミラーの北回帰線』(1970)も映画化している。『ユリシーズ』『若き芸術家の肖像』は『バルコン』同様、米イメージ・エンターテインメント、英アロウ・フィルムより発売。

『ユリシーズ』米Image Entertainment盤DVD

『若き芸術家の肖像』米Image Entertainment盤DVD

ストリック監督のカルト映画『ロード・ムーヴィ』(未。1974)の米盤DVD

ストリック監督の最新作の記録映画『犯罪者たち』(未。1996)の米盤DVD

エリ・ランドウ(1920ー1993)が70年代に製作した「米国映画劇場」シリーズの1本、ジュネの戯曲に基づくクリストファー・マイルズ監督『女中たち』(未。1975)は米キノでDVD化されている。主演はグレンダ・ジャクソン、スザンナ・ヨーク。

『女中たち』米Kino盤DVD

なおジュネ脚本、トニー・リチャードソン監督の『マドモワゼル』(1966)は米MGMでDVD化されているが廃盤。またジュネの小説『ブレストの乱暴者』に基づくファスビンダー監督の『ケレル』(1982)は、紀伊國屋書店から発売中の『ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーDVD−BOX㈼』に収録。ジュネの小説『薔薇の奇跡』に基づくトッド・ヘインズ監督の『ポイズン』(1991)は、米フォックス・ローバー(現ウェルスプリング)でDVD化されている。