第30回 ジャン=ピエール・メルヴィル監督の伝説的傑作『影の軍隊』のHD DVD、
英国出身の曲者俳優ダーク・ボガードとジェイムズ・メイソン2007年04月03日
ジャン=ピエール・メルヴィル監督作のDVDといえば、撮影監督ピエール・ロム(1930年生まれ)の監修により2004年に修復され、米国でも2006年に初公開され話題を集めた伝説的傑作『影の軍隊』(1969)のDVDが各国から出ている。日本でも2003年に東北新社から、修復前の原版によりDVD化されていたが廃盤。日本盤は137分。144分の完全版はWOWOWで放映

第29回 狂躁的喜劇『ヘルザポッピン』と『無責任時代』2007年03月22日
2007年2月17日、作詞家のレイ・エヴァンズが亡くなった。享年92。

第28回 グロリア・スワンソン、ビービー・ダニエルズ、ラリー・シーモン2007年03月05日
2月13日に、米国パスポート・ヴィデオから『グロリア・スワンソン・コレクション』DVD−BOX(5枚組)が発売された。『恋愛即興詩』を除きすべて無声映画。音楽付き。リージョン・フリー。

第27回 エリック・ロメール監督の『獅子座』をめぐる人々2007年02月23日
「第15回」でも言及したエリック・ロメール監督のオノレ・デュルフェに基づく最新作『アストレとセラドンの恋』は2006年5月2日にオヴェルニュ地方で撮影に入り、撮影終了予定は7月中旬と報じられたが、今年の7月に公開予定。製作はレゾ・フィルムのフィリップ・リエジョワとエリック・ロメール社。共同製作はスペインのアルマ・フィルムスとイタリアのBIMディストリビュツィオーネ。

第26回 ポール・ロブソン、ダドリー・マーフィ、オスカー・ミショー、ウィル・ロジャースほか2007年02月05日
「黒人歴史月間」の2月13日、ポール・ロブソンのDVDコレクション『ポール・ロブソン:アーティストの肖像』DVD−BOX(4枚組。レヴュー)が米クライテリオンから発売。

第25回 アンディ・エンゲル追悼、オスカー・フィッシンガー没後40年2007年01月31日
英国の配給会社アーティフィシャル・アイの創設者アンディ・エンゲルが2006年12月26日にドイツのリューベックで亡くなった。享年64。コリン・マッケイブのプロデュースによる監督作『メランコリア』(未。1989)のほか、友人だったストローブ=ユイレ監督『階級関係』(公開題『アメリカ』。1984)における忘れがたい陰湿な門衛長の役で記憶される。

第24回 ダン・ドゥリエイ生誕100年2007年01月10日
ダン・ドゥリエイは、ダン・ドゥリエ、ダン・デュリエなどの日本語表記で知られる立川談志師匠もひいきにする性格俳優。1907年1月23日生まれなので今年は生誕100年にあたる。ダン・ドゥリエイ主演の映画はすべて日本未公開だが、とりわけ「第18回」で紹介した、コーネル・ウルリッチ原作、ロイ・ウィリアム・ニール製作・監督の『黒い天使』(未。1946)は有名。台本、セット美術、撮影、演技もどれも低予算ながら素晴らしい。特にブロンドのB級女優ジューン・ヴィンセント(1920年、オハイオ州ハロッズ生まれ)は魅力的。彼女の歌も聴ける。

第23回 アレン・バロン監督・主演の『沈黙の銃声』
今回はアメリカ映画史上最も陰気で厭世的なクリスマス映画の話題。
今年のカンヌ映画祭で上映された幻のフィルム・ノワール『沈黙の銃声』(未。1961。レヴュー)は、製作から45年を経て、ついにフランスで7月5日に公開された。

第22回 エルンスト・ルービッチュ、オトー・プレミンジャー、ロバート・ミッチャム
今回はまず喜劇映画の巨匠エルンスト・ルービッチュ関連のDVDを紹介する。フランスのBACヴィデオから11月23日にルービッチュ監督、ギャリー・クーパー主演の『生活の設計』(1933)、『百万円貰ったら』(1932)、『青髭八人目の妻』(1938)のDVD発売。すべてHDニュー・マスター。『百万円貰ったら』の監督はジェイムズ・クルーズほか8人で、ルービッチュはその一人。

第21回 リパート映画、バーバラ・スタンウィック
サミュエル・フラー監督の日本未公開の異色西部劇『四十挺の拳銃』(DVD題。1957)のDVDが11月25日、紀伊國屋書店から発売。以前国内版ビデオも出ていたが、トリミング版だった。今回のDVDはシネマスコープのノートリミング版。

第20回 ルイーズ・ブルックス生誕百年、アンリ・ラングロワ、ジャック・フェデール
今年は20年代後半に活躍した伝説の女優ルイーズ・ブルックス生誕百年にあたる。彼女の誕生日は1906年11月14日。 米リッツォーリ社からピーター・カウイ著、ブルックスの美麗な写真集『ルイーズ・ブルックス:ルルよ永遠に』(英語、240頁)が発売中。

第19回 ダニエル・ユイレ追悼、セザンヌ没後100年
以下のセザンヌ没後100年の記事を書き終えた後、思わぬ訃報が入った。40年以上にわたりジャン=マリー・ストローブとの妥協なき協同的映画創作を続けてきた偉大な映画作家ダニエル・ユイレ(1936年5月1日、パリ生まれ)が10月9日に、ガンのため亡くなった。享年70。ロサンゼルス在住の映画作家・映画批評家アンドルー・レクターのブログに10月10日付で、ユイレの少女時代の写真が掲載されている。

第18回 ビクトル・エリセ、ロイ・ウィリアム・ニール、ジェイナス・フィルムズ
2006年2月9日か5月21日までバルセロナ現代文化センター(CCCB)で行われた「エリセ=キアロスタミ往復書簡」展で、ビクトル・エリセの新作短編『ラ・モルト・ルージュ La Morte Rouge』(DV。32分)が上映された。「ラ・モルト・ルージュ(赤い死)」というのはロイ・ウィリアム・ニールの『緋色の爪』(未。1944)に出てくるカナダの村の名前。このユニヴァーサル社製作のシャーロック・ホームズものB級映画は、1940年6月30日生まれのエリセが1946年にサンセバスティアンで観た最初の映画であるという。

第17回 B級映画王エドガー・G・ウルマー
エドガー・G・ウルマーは1904年9月17日、チェコのオロモウツで生まれた。今年は生誕102年にあたる。2006年9月14日から17日まで、エドガー・G・ウルマーに関する初の学術会議「ウルマー祭」がオロモウツのパラツキー大学アート・センターで催される。主催はドイツ研究協会(DFG)、プラハ・ユダヤ博物館、プラハ・ゲーテ・インスティテュート。

第16回 オタール・イオセリアーニ、リュック・ムレ、ピーター・ワトキンスらの反体制的映画
オタール・イオセリアーニの新作『秋の庭』(仮題。107分)が7月7日に、フランスのラ・ロシェル映画祭で上映された。イオセリアーニと出演者の一人ミシェル・ピコリが出席。またパリ市内の映画館アルルカンで、「パリ・シネマ」という企画枠でも7月9日に先行上映された。こちらはイオセリアーニと出演の一人ピエール・エテックスが出席。フランス=イタリア=ロシア合作映画で、パリでの正式公開は9月6日。

第15回 ジャン・ルーシュ、ミシェル・ブロー、ミシェル・ファノ
ジャン=リュック・ゴダール監督の『恋人のいる時間』(1964)の原題は『ある既婚女性』という意味だが、もともと考えられていた題名は、定冠詞付きの『既婚女性』だった。だが、この作品が既婚女性の不倫という題材を扱っているため、その題名は既婚女性一般への冒涜だというので、フランス政府当局の圧力により改題を余儀なくされた。さらに、ゴダールは情報大臣アラン・ペルフィットとの会談ののち、この作品を公開するための条件として数箇所の削除に同意した。ところで、この映画はある意味で、1964年のパリを舞台にした人類学(民俗誌)的映画と考えられる。

第14回 A・I・ベゼリデス、バトジャック・プロ
黒海沿岸サムスン(現トルコ領)出身のギリシャ系アメリカ人作家A・I・(アルバート・アイザック・)ベゼリデスは、1908年生まれということなので、再来年には100歳になる伝説の作家である。彼の著作は日本語には翻訳されていない。また小説家としても映画脚本家としてもほとんど論じられることもない。

第13回 DVDで観る吸血鬼映画
ハマー・フィルム・プロが恐怖映画を作り始めたのは1956年。今年は50周年にあたる。ハマーは1951年、米国の製作者ロバート・リッパートと共同製作を始めた。これによって北米市場を拡大、また米国人俳優の起用も増えた。ハマー初のカラー映画はヴァル・ゲスト(2006年5月10日没)監督の『ロビン・フッド物語』(1954)。

第12回 無声映画と音楽の創造
紀伊國屋書店からクリティカル・エディション・シリーズの1枚として、ベンヤミン・クリステンセン監督の『魔女』(未。1922)のDVDが発売される。この世界的に名高い日本未公開の古典が日本語字幕付きで手軽に観られるようになったのは、さしあたり僥倖と言ってよいだろう。 伴奏音楽は、『裁かるるジャンヌ』クリティカル・エディションと同じ柳下美恵のオリジナル録音。

第11回 マックス・オフュルス監督の『魅せられて』をめぐる人々
紀伊國屋書店からマックス・オフュルスの日本未公開作『魅せられて』(1949)DVDが6月24日発売。TV放映のみの日本未公開作の待望のDVD化だ。

第10回 赤狩り時代のルイス・ブニュエル、ダミアーノ・ダミアーニ、マブゼ博士
かつてエリック・ロメールが学生向けの映画講義において選んだ映画史上の12本がある。

第9回 アンソニー・マン生誕100年、ジョン・オルトン没後10年
やはり未だ発見途上にあるのだろうか、アンソニー・マン生誕100年を顕彰しようという声をほとんど聞かない。マンが生まれたのは1906年6月30日。亡くなったのは1967年4月29日。

第8回 フリッツ・ラング、ピエール・リシアン、ジョン・ベリー、チャン・ジンチュー
紀伊國屋書店からDVDが発売されたフリッツ・ラング監督のサイコ・スリラー『扉の影の秘密』(劇場公開題『扉の蔭の秘密』1948)は、日本未公開の『緋色の街〜スカーレット・ストリート』(放映題。1945)に続き、ラングと製作者ウォルター・ウェインジャー、ウェインジャーの妻で主演女優のジョーン・ベネットの三者が作った半独立製作会社ダイアナ・プロの第二作である。ダイアナは、ベネットが最初の結婚でもうけた長女の名。

第7回 マウリツ・スティルレル、セルマ・ラーゲルレーヴ、グレータ・ガルボ
米キノ・ヴィデオがついにマウリツ・スティルレル(1883−1928)監督作のDVD3タイトルを発売(6月6日)。『エロティコン』(特殊上映題。1920)、『イエスタ・ベルリングの伝説』(ビデオ題。1924)、『吹雪の夜』(原題『アーネ師の宝』。1919)の3作である。

第6回 カール・テオドア・ドライヤーのDVDを比較する
4月5日に出た仏MK2の『ドライヤーDVD−BOX』は米クライテリオン盤BOXとどう違うのか興味深いところ。 ちなみにクライテリオン盤『カール・テオドア・ドライヤーDVD−BOX』には、『怒りの日』(1943。97分)、『奇跡』(1955。125分)、『ゲアトルーズ』(1964。116分)、トーベン・スクヨット・イェンスン監督の『カール・テオドア・ドライヤー:わが職業』(未。1995。94分)を収録。

第5回 サミュエル・フラーとジェシー・ジェイムズ
フランスのワーナー・ホーム・ヴィデオから4月12日、『陽動作戦』のDVDが発売された。 『陽動作戦』はワーナー社の製作者ミルトン・スパーリングの企画した映画である。もともとゲイリー・クーパー主演で企画されていたが、準備段階でクーパーが病に倒れ、メリル准将役は第二次大戦に従軍したジェフ・チャンドラーが演じた。クーパーは1961年5月13日死去。チャンドラーも映画の完成を待たず1961年6月17日に亡くなった。

第4回 DVDによる1968年再考
ゴダールの『ワン・プラス・ワン』(1968)は日本でも90年代に公開され、DVDにもなっているので、よく知られていることだろう。しかし、実はそれはゴダールの『One + One』ではない。『One + One』という題名は監督のゴダール自身が自分の編集した版に付けたものだが、日本で『ワン・プラス・ワン』として流通している作品は、ストーンズを商業的な売りにするため、『Sympathy for the Devil』すなわち、ストーンズの『悪魔を憐れむ歌』と同じ題名にし、同名曲のテイクを全編サウンドトラックに含めた、プロデューサー、イアン・クォリエイの編集した版である。

第3回 サミュエル・ベケット生誕100年とジャン・ジュネ没後20年
20世紀演劇の巨匠サミュエル・ベケットは1906年4月13日に生まれた。したがって今年は生誕100年にあたる。9月末には日本サミュエル・ベケット研究会による国際シンポジウムが行なわれる。

第2回 リチャード・フライシャー追悼
2006年3月25日、リチャード・フライシャーがロサンジェルスの病院で亡くなった。享年89歳。 サンタ・モニカのアエロ劇場で3月15日から19日まで回顧上映が行なわれたばかりだった。上映作品は『見えない恐怖』(1971)、『その女を殺せ』(ビデオのみ。1952)、『恐怖の土曜日』(1955)、『絞殺魔』(1968)、『10番街の殺人』(ビデオのみ。1970)、『海底二万哩』(DVD題『海底2万マイル』1954)、『ミクロの決死圏』(1966)、『ソイレント・グリーン』(1972)。

第1回 ニコラス・レイ、谷洋子
今回は、『ビガー・ザン・ライフ』(1956)日本盤発売の紹介も兼ねて、ニコラス・レイのDVDを紹介する。今年公開50周年にあたる『ビガー・ザン・ライフ』は、『黒の報酬』という題名で放映されたことはあるものの、日本ではほとんど観られていないといっていいだろう。

第0回
「世界映画DVD発見」というタイトルは、カナダのシネフィル季刊誌「シネマスコープ」連載中のシカゴ在住の映画評論家ジョナサン・ローゼンバウムのコラム名(オンラインで読める)にちなんでいる。