海外版DVDを見てみた 第13回 マイケル・パウエルの『スモール・バック・ルーム』を見てみた 2012年5月10日
今回はマイケル・パウエルのノワール作品とされる『スモール・バック・ルーム』Small back room(直訳すると「小さな裏部屋」と、しまらない題になってしまうのでカタカナで表記)を中心に、パウエルのスリラー作品を取り上げる。パウエルは脚本家エメリック・プレスバーガーとの協力で、『赤い靴』や『ホフマン物語』など豪華絢爛なミュージカルや、『天国への階段』などの人間ドラマの大作の数々を生んだ、日本でも最も著名なイギリス人映画監督と言っていいかと思うが、その作品数は相当数に上り(IMDbでは短編なども合わせて60本としている)、全く日本で公開されなかった作品(特に低予算)も多い。その中にはスリラーも多々あり、その中のいくつかに関してはイギリスやアメリカでDVDも出ているので、今回取り上げるのはそうした形で見ることができた作品である。


海外版DVDを見てみた 第12回 ジョージ・キング『スライ・コーナーの店』、『禁断の恋』を見てみた 2012年4月10日
今回取り上げるのはやはり47年に撮られたイギリス作品『スライ・コーナーの店』The shop at Sly Cornerと、その翌年に撮られた『禁断の恋』Forbidden。といってもこれらはフィルム・ノワールではない。犯罪ドラマ=スリラー=サスペンスであることは確かだが、世界観から言ってノワールとはやはり言えないように思う。まあ、この頃に撮られた犯罪映画がすべてノワールだということはあり得ない話なので、ともあれイギリスのジャンル映画の一部門である犯罪ものを概観する一環として、今回の作品もあると考えていただく


海外版DVDを見てみた 第11回 ジョン・ボールティングの『ブライトン・ロック』を見てみた 2012年3月6日
今回取り上げるのはジョン・ボールティング監督の『ブライトン・ロック』。これも前々回の『私は逃亡者』前回の『十月の男』と同じ、47年度の作品である。周知の通り、本作は原作がイギリスの文豪グレアム・グリーンの小説。グリーンは、エンターティンメント系の作品と、純文学系の作品を並行的に発表した作家であるが、エンターティンメント系の作品にも西欧文明に対する痛烈な批判が込められており(彼は一時共産主義者だったが、後に共産主義に幻滅している)、必ずしも一つの作品が完全にエンターティンメント系だとか、純文学系だ、とは言い切れない。


海外版DVDを見てみた 第10回 『ロイ・ベイカー『十月の男』を見てみた』 2012年1月31日
アメリカ映画におけるフィルム・ノワールのメルクマールとなる年は、フリッツ・ラング『飾窓の女』や、ビリー・ワイルダー『深夜の告白』などが発表された1944年とされるが、イギリスにおけるそれは1947年ということになるだろう。前回取り上げたカヴァルカンティ『私は逃亡者』(また前回言及したキャロル・リードの『邪魔者を消せ』)も1947年である。


海外版DVDを見てみた 第9回 『カヴァルカンティの『私は逃亡者』を見てみた』 2011年12月30日
今回からしばらくはイギリスのフィルム・ノワールを取り上げてみる。フィルム・ノワールは必ずしもアメリカ特有のジャンルというわけではなく、ある程度映画産業が発展して、犯罪映画が一つのジャンルとして確立された国ならばどこでも戦後の暗い世相を反映した犯罪映画の一変種としてフィルム・ノワールは出現しうるのであって、イギリスも例外ではなかった。同じ英語圏でもあり、とりわけ赤狩りの時代には、アメリカを追われた映画人がイギリスでノワールを撮っていたりもして、イギリスのノワールの製作本数はアメリカに次いで多い。またその中には傑作も多々含まれていて、そうした作品の多くはイギリス本国やアメリカにおいてDVD化されているものの、日本ではその存在すらあまり知られているようではない。


海外版DVDを見てみた 第8回『テレンス・デイヴィスを見てみた』 2011年12月7日
前回のビル・ダグラスに続きイギリスの映画作家を取り上げる。ダグラス同様自伝的な作品からキャリアを開始している作家で、ダグラス同様地方の下層階級の生まれ(ダグラスは34年スコットランド、デイヴィスは45年イングランド、リヴァプール)であり、自伝的トリロジーを、しかもBFIの助力で製作することからキャリアを開始している点でもよく似ている(ただ二人が知り合っていたのかどうかは不明)。


海外版DVDを見てみた 第7回『ビル・ダグラスを見てみた』 2011年11月2日
八月中に仕事が重なり、九月に疲労脱力してしまったせいで、九月分の更新ができずじまいになってしまった。さらに、十月取りあげようと思っていた作家の原稿の準備が追いつかず、急遽差し替えねばならなくなり(これについては以後改めて取りあげることもあるかと思うが)、更新が遅れてしまった。そんな人がいるのかどうか分からないが、もし更新を待っていてくれた方があるのならばお詫び申し上げたい。


海外版DVDを見てみた 第6回『ラウール・レヴィを見てみた』 2011年8月23日
ラウール・レヴィの名を後から思えば確かに目にしていた筈ながら、まったく記憶には残っていなかったのだが、山田宏一氏の『ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代』で、『二人の殺し屋』(65)と『ザ・スパイ』(66)の二本の映画の監督であり、しかも「ともに知られざる傑作である!」とあるのを読み(その時は忘れていたが、『友よ映画よ、わがヌーヴェル・ヴァーグ誌』の第二十三章の前半部がレヴィの記述に充てられていたことにその後気づく)、これは是非見たいものだと思っていたのであった。で、いざ探してみたら、確かにアメリカでDVDが出ているのである。これは見ねばなるまい。ということで見てみた。


海外版DVDを見てみた 第5回『メイズルズ兄弟を見てみた』 2011年7月27日
アルバートとデイヴィッドのメイズルズ兄弟はアメリカのダイレクト・シネマの代表的映画作家。兄がカメラを、弟が録音を担当し、二人で撮影するスタイルで映画製作をしてきたが、デイヴィッドが87年に死去してからは、旧作のフッテージを編集したもの以外、二人での監督クレジット作はない。アルバートは現在もカメラマンとして活躍しているようだ。二人による映画は、有名人に密着して、その人となりを捉える、というものが多いが、それも、二人だけという身軽な撮影体制と、二人の温厚な人柄(といっても写真で見る限り、ないし、映画に映り込んでいる彼らの様子から判断してのことに過ぎないが)があって可能になっているものだろう。彼らの作品は十数本あるのだが、ここでは代表作と言える数本の作品を見てみた。


海外版DVDを見てみた 第4回『シャーリー・クラークを見てみた』 2011年6月29日
今回取り上げるシャーリー・クラークは、前回取りあげたモーリス・エンゲル=ルース・オーキンとは様々な意味で対照的な作家だ。エンゲル=クラークがアメリカのインディペンデント最初期の作家でありながら、その後不幸にも忘れ去られ、しかし今やDVDという形でその全作品が観られるようになったのに対し(作品数自体少ないし)、クラークはジョナス・メカスと並ぶインディペンデントの最も有名な作家であり、しかしその作品自体はと言えば、本国アメリカですら、かつてソフト化された作品も最早手に入らず、実際に観ることができないのが現状である(メカスやクラークが設立した、インディペンデント映画の配給会社も倒産しているようなので、上映も出来るのか出来ないのか)。


海外版DVDを見てみた 第3回『モーリス・エンゲル=ルース・オーキンを見てみた』2011年5月24日
お世辞にも可愛らしいとはいえない子供である。隙っ歯に、そばかす、腰のピストル(もちろん玩具)がだらしなくぶらさがり、幼い舌足らずなものの言い方も微妙に人をいらだたせる。それが一緒に遊べとくっついてくるのだから、兄としては厄介払いしたくなるのも分からなくはない。しかも母親が弟の面倒をみろと命じたのをたてに、「お兄ちゃんは僕の世話をすることになってるんだよ」と生意気を言ってくるのだからなおさらだ。かくして兄は、仲間と語らって弟を騙す一計を案じる。本物の銃を弟に撃たせ、自分が死んだように見せかけるのだ。お前は死刑だ、警官に気をつけろ、と言われ青くなった弟は、泣きながら逃げ出す。ざまあみろと大笑いする兄だが、そのうち不安になり始める。家に逃げ帰った筈の弟がおらず、母親が置いていったお金(母親は今晩一晩留守にせざるを得ない。ちなみに一家は母子家庭)がなくなっているからだ。


海外版DVDを見てみた 第2回『ライオネル・ロゴージンを見てみた』2011年4月22日
ライオネル・ロゴージンの長編三本が収められたDVDボックスがフランスで2010年の四月に発売されている。『バワリー25時』On the Bowery(57)、『帰れ、アフリカ』Come back, Africa(59)、『良き時代、すばらしき時代』Good times, wonderful times(66)。フラハティにつながるドキュメンタリー作家であり、また五十年代から六十年代に勃興したアメリカ・インディペンデント映画の重要人物であったロゴージンだが、その作品自体は長らく見られないままであった。


海外版DVDを見てみた 第1回『マルセル・オフュルスを見てみた』2011年3月21日
今月からこのサイトでコラムを持たせて頂けることになった。海外の映画、とりわけ海外版DVDのレビューが中心となると思うが、それに限らないかもしれない。今回は2010年10月にアメリカでマルセル・オフュルスの代表作の一つ『ホテル・テルミニュス 戦犯クラウス・バルビーの生涯』Hotel Terminus : The life and times of KLAUS BARBIE(88)のDVDが出たので、それを期に、既にフランス、アメリカ、イギリスでDVD化されているオフュルスのもう一つの代表作『悲しみと哀れみ』Le Chagrin et la pitié(69)と合わせてマルセル・オフュルスを取り上げる。