かつて、映画を観るということは、映画を観に出かけること、映画館に行くということでした。
そして、何よりも、観たい映画が上映される日が来るのを待つ、ということでした。映画とそれを観ることの
間には遠い距離があった。映画ファンは、映画の本に載ったスチールを眺めて空想をし、映画について書かれた
活字を繰り返し読んだものでした。それは映画への憧れが募る幸せな時間でありました。しかし、
もし自分が映画館を持つことができたら、そしてそこで自分の好きな映画を存分に観ることが出来たら・・・。それを夢見なかった映画ファンはいなかったでしょう。
その後、ビデオやDVDの登場と普及により、映画は家の中で直ぐに観ることが出来るようになりました。
『御家庭映画館』(1989)、けた外れの映画好きとして知られた作家、色川武大の書いた本の題です。
映画ファンが、自分の映画館、映画の國を持つことができるようになった喜びが、この題にこめられていると思います。
紀伊國屋レーベルが、名画座での特集上映のような個人全集や、映画祭などでしか観ることが出来なかった
映画などを中心に編成しているのは、そんな映画ファンの遠い夢の記憶があるからなのでしょう。
今回、紀伊國屋レーベルは刊行開始から10年を迎えることが出来ました。
2001年5月25日の『ミステリアス・ピカソ』を第一弾として、現在までに約700タイトル
(品番ベース、廃版含む)が揃いました。そのことを記念して、ここに、現在入手可能なタイトルから
100の映画を選びました。映画史の中で語り継がれるような作品と、多くの方に人気のある作品を
ブレンドしています。これらの作品が映画の國へのパスポートとなることを願います。
そしてこれからも紀伊國屋レーベルは、全ての映画ファンのための充実した映画の國となる様に、努めて参ります。
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